「通り魔殺人」過去最悪?

 自由に通行できる場所で明確な動機なしに、無関係の人を殺傷する「通り魔殺人事件」は今年に入って9日までに全国で14件発生し、死傷者が43人にのぼったことが11日、警察庁のまとめで分かった。件数、死傷者数ともに過去最悪となった。刑法犯全体の認知件数は6年続けて減少したが、殺人事件(未遂を含む)は戦後最少だった07年同期より約7%増えた。
 同庁は93年から通り魔殺人事件を集計している。今年に入っての死傷者43人のうち死者は11人で、これも過去最多だった。都道府県別では東京6件、茨城2件、北海道、千葉、岐阜、三重、福井、岡山が各1件。

http://www.asahi.com/national/update/1211/TKY200812110319.html

だそうな。資料がないので適当なことはいえないが、「通り魔殺人」による死傷者数、死者数が過去最悪だったというのならわかる。でも件数が「過去最悪」というのはおかしい。以下は警察庁の「犯罪情勢」と「昭和61年 警察白書」、通り魔事件の映像-少年犯罪データベースドアを参照して作成したものである。
通り魔殺人の認知件数の推移(1980年〜)

朝日新聞の記事によると警察庁が通り魔殺人事件の集計を始めたのは1993年(平成5年)からということになっているが、「昭和61年 警察白書」の第2章 犯罪情勢と捜査活動には以下のような項目がある。

おそらく、警察庁が1993年から集計しているというのは、通り魔殺人事件を正式にひとつの項目として集計し始めたのが1993年からということなのではないだろうか。「昭和61年 警察白書」に通り魔殺人事件の記載があるのも、1985年(昭和60年)に多発し「過去最悪」になったからだろう*1
で、この朝日新聞の記事にたいしてひとつ確実にいえるのは、件数は「1993年以降で最悪」「近年で最悪」ではあっても、「過去最悪」などではまったくない、ということ。事実、警察白書に反例が載っているわけ。それを調べてみる気はなかったの、野田一郎さん?


平成19年(2007年)の「殺人、強盗致死(強盗殺人)、傷害致死の認知件数(の合計)とそれによる死亡者数およびそれらの人口10万人あたりの比率」も戦後最低(たぶん) - どうにもならない日々

*1:「悪質、巧妙化した凶悪事件」という項目のうちのひとつであることからも推測される